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10シリーズの流れ(後半)

Pilates Expansion 10series(ピラティスエクスパンション10シリーズ)の前半を振り返ってみましょう。第1ステージと第2ステージでは、胴体と脚(体幹と下肢)の関係性を中心となるテーマにしていきました。股関節がその接続部になっていました。そして、第3ステージと第4ステージでは、胴体と頭(頭部と体幹)の関係性に着目しました。首がカギとなる部位になっていました。第5ステージと第6ステージでは、胴体と腕(体幹と上肢)の関係性を見ていきます。

【第5ステージ】
テーマ:腕と身体のつながりをつくる、優雅な上半身をつくる(上肢と体幹の連結)
身体のしくみ:エロンゲーション、リブコントロール(アッパー)、コアコントロール
セルフリリース:肩部、腹部(腹直筋)、骨盤前面(腸骨筋)
ゴールとなるエクササイズ:スパイナルローテーション

【第6ステージ】
テーマ:しなやかな強さのある上半身をつくる(上肢による体幹および全身の支持)
身体のしくみ:コアコントロール
セルフリリース:上腕部、前腕部、坐骨周辺、大殿筋
ゴールとなるエクササイズ:プッシュアップ

女性の場合は腕を太くしたいと考えている人は少なく、よりすっきりとさせたいと思う人がほとんどでしょう。肩回りなどについても同じだと思います。多くの男性は肩回りや腕の逞しさを求めているかもしれません。ですが、トレーニングを習慣にしていない状態なのに、肩や腕が太いと感じている人は、その部分が過緊張していることが考えられます。かばんを持ったり、何かを持ち上げたり、あるいは重たいものではなくても、長い時間パソコンで作業をしていたり、料理を作っていたり、腕を使った動作を私たちは日常的にしています。これらの日常の中での動作を身体の中心から、体幹からつながりがある中で行なえるようになると、上半身に優雅さや伸びやかさが出てきます。肩や腕に重たさがなく、軽やかで心地よく快適であれば、それは美しさにつながっています。

セルフリリースの方法は、身体のあらゆる部位に存在します。第5ステージでは、肩甲骨周辺エリアと体幹の前側(腹部、骨盤前側)を開放していく方法を学びます。肩甲骨周りの筋肉は緊張しやすい部分の1つです。その緊張が緩んでいかないと、スムーズに腕を上げたり下げたりすることはできません。肩周りが強張って緊張しがちな状態から解放されると、腕が長くなったような気がしたリ、胸が開いて姿勢が良くなった印象に変わっていきます。腹部や骨盤の前側も緊張から解放されることと同様に、座ったり立った時の姿勢がとても美しくなります。身体の心地よさが見た目の良さとつながっていることを実感するかもしれません。

第6ステージでは、たくさんの筋肉が関係している坐骨周辺と、腕(上腕部と前腕部)を緩める方法を学んでいきます。第1ステージと第2ステージでテーマになった股関節を考えた時に、また呼吸のメカニズムを考えた時も同様に、この坐骨周辺の筋肉は解放しておきたい部分になります。また、大臀筋というお尻の筋肉は過剰に緊張すると脚をよりがに股(外旋)にしようと働いてしまいます。私たちの生活の中で重要な筋肉ではあるのですが、普段は過緊張させたい筋肉ではないのです。過緊張することで、お尻の穴を締めてしまう方向に働き、お尻の穴が締まることで呼吸で起こる筋肉の自然な働きも損なわれ、深く吸うことが難しくなってしまいます。この部分が解放されることで、より無理なく深く息を吸うことができるようになります。腕の緊張も肩こりや身体の不快感に大きく影響している部分になります。この辺りも解放させていくテクニックを学んでいきます。

【第7ステージ】
テーマ:伸びやかな脚と強いコアを手に入れる(コアの感覚の獲得、体幹から下肢への伸張と分節、そして統合)
身体のしくみ:リブコントロール(ロウアー)、コアコントロール、エロンゲーション
セルフリリース:骨盤側面(大腿筋膜張筋、中殿筋)、大腿部後面(ハムストリングス)
ゴールとなるエクササイズ:ライブラ、シングルレッグストレッチ

第6ステージから、筋力トレーニングの要素が増えてきました。ですが、10シリーズでのそれは、一般的な筋力トレーニングかなり質の違う努力が必要です。身体の感覚を大切にしながらの筋力トレーニング、姿勢や動きがより正確に出来ているかを意識しつつエクササイズをしていくことは、無我夢中に、がむしゃらに努力することと大きく違っています。精神的な努力が必要です。身体の表面についている大きな筋肉は、この努力をあまり必要としません。より深い層にある筋肉は、この努力を必要とします。第7ステージはそういう意味でも、多くの人にとって1つのチャレンジになると思います。焦らずにていねいに進めてください。1回でクリアしなくてもよいステージ、少し時間をかけることの方が自然なステージが第7ステージです。

セルフリリースは、骨盤の側面に対してのものを習得していきます。このエリアは歩行動作の質にかなり影響を与えています。私たちの歩き方の特徴によって、または立ち方の特徴によって、骨盤側面のある部分に過剰な緊張があるかもしれません。重力とより良い関係を私たちが築くことができれば、この辺りの過緊張は解消されていきます。第7ステージまで進むと、以前より優雅に心地よく歩くことができたり、すらっと立つことができるようになってきています。このエリアの筋肉の過緊張を軽減させた中でトレーニングを行なうことで、より効率よく成長していくことができるようになるでしょう。今回学ぶセルフリリース方法は、立つ時間が長い人や歩いたり走ったりする機会が多い人には、大きな手助けになると思います。

ゴールとなるエクササイズも、これまでは本来の目的やポイントからはずれてしまって無理をしても、動き自体はなんとなくできた気分になってしまうものがほとんどでした。クリアしているかどうかの基準をエクササイズができたかどうかではなく、身体が快適かどうかにしていることの理由でもあります。第7ステージになるとピラティスエクスパンションのコンセプトを理解していないと、動き自体も思うようにできなくなってきます。第1ステージからここまで積み上げてきたからこそできるダイナミックな動きや身体の変化に、是非、感動してください。Pilates Expansion 10series(ピラティスエクスパンション10シリーズ)全体のクリアも目の前です。

【第8ステージ】
テーマ:伸びやかさとしなやかさのある背骨を手に入れる(脊柱の伸張と分節、そして統合)
身体のしくみ:エロンゲーション、アーティキュレーション、コアコントロール、リブコントロール(アッパー)
セルフリリース:頭頸部2
ゴールとなるエクササイズ:ロールアップ

【第9ステージ】
テーマ:上半身から全身のつながりをつくり、しなやかな背骨を手に入れる(脊柱の伸張からの伸展、そして統合)
身体のしくみ:エロンゲーション、アーティキュレーション、コアコントロール
セルフリリース:目、あご
ゴールとなるエクササイズ:スワン

伸びやかな背骨やしなやかさのある背骨をエクササイズによって手に入れることができるのは、ピラティスならではの得られる恩恵の1つです。筋肉の柔軟性は、かなりたくさんの時間さえ費やせば、何をどんなふうに行なうかにあまりこだわらなくても手に入ることができます。筋肉のストレッチは、何をどのようにしたかといった内容や質よりも、頻度・時間が重要です。背骨の柔軟性は、頻度・時間ではなく、内容や質が重要になります。Pilates Expansion 10series(ピラティスエクスパンション10シリーズ)で、伸びやかさとしなやかさのある背骨を手に入れましょう。身体のしくみを理解して動きの手助けをしてもらうことは、ゴールとなるエクササイズをクリアしていくためにとても重要になります。このステージをクリアすることも、1度でのクリアは多くの人にとっては簡単ではないでしょう。第7ステージと同じように、自分のペースで焦らずにていねいに自分自身の身体と、動きと関わりながら進めてください。

第9ステージでは、目とあごのリリースを学びます。パソコン作業の長い人や対人関係や仕事などで過剰な緊張の現れやすいエリアです。噛みしめ癖や睡眠時の歯ぎしりを周りの人や歯医者さんから指摘されたことのある人は、ストレスに耐えきれなくなってきているサインがあごの痛みや違和感として表面化しているのかもしれません。目の前の人やパソコンやスマートフォンの画面などに対して緊張していると、それは目に現れてきます。あごのような直接的な大きな不快感や痛みはないかもしれません。ですが、強張った見た目の印象を与えてしまったり、柔らかくものや景色を捉えることができなくなっていることで、思考や感情にも良くない影響を自分自身に与えてしまっています。目の緊張を取り除いていく方法を学ぶことで、視界が明るくなったり、広くなったり、世界が変わって見える体験をしてください。視覚からの情報の受け取り方が変化すると、優しい気持ちが沸き上がってきたり、自分をより俯瞰的に冷静に認識できるようになっていきます。

【第10ステージ】
テーマ:強い足腰と地面から全身のつながりをつくる(下肢からの全身の統合、全身の拡張と統合)
身体のしくみ:エロンゲーション、アーティキュレーション
セルフリリース:前腕、手
ゴールとなるエクササイズ:スタンディングロールアップ

最後のステージです。身体感覚の旅は、最後の統合のプロセスに入ります。内側から改革の行ない、フィジカル(身体)とメンタル(心、精神)を変容させる帰結点として、外の世界である地面とのつながりと向き合っていきます。

テニスボールか何か手で掴めるようなボールを握って、立ってみてください。握っている手を緩めて、ボールを床に落とすと、そのボールは床から反発して跳ね返ります。ボールをもし力強く手で握っていたら、当たり前ですが、そのボールは床に落ちていくことはありません。ボールが自分自身の中心、核(コア)だと想像してみてください。握っていた手を自分自身の表層にある筋肉だと想像してみてください。足が床を押すのに対応して、床が人の足に与える反作用の力を床反力と言います。自分自身の身体が解放され、エクスパンション(拡張)した時、私たちの中心(ボール)はボールが床から跳ね返るように、床からの反力を得ることによって、空に伸びていくことができます。オステオパシーという素晴らしい民間療法の世界などで有名なハリソン・フライエット博士は「重力は最大の殺し屋である」と述べていますが、殺し屋であった重力が私たちの身体をより伸びやかなものに変容をサポートしてくれる味方に変化するのです。「すべての関節が開き、屈筋と伸筋のバランスが取れた時、拡張(エクスパンション)が中心から起こり」、Pilates Expansion 10series(ピラティスエクスパンション10シリーズ)によって、私たちの身体をより伸びやかなものに変化していくのです。